世界2,800ヶ所以上の夜景を巡った男が庭園を巡る
国指定名勝

退蔵院

たいぞういん
美しさ ★★★
静寂さ ★★
京都府京都市右京区
  • 退蔵院山門

    3つの枯山水と中根金作の池泉庭園

    池泉庭園 枯山水 / 国指定名勝
    庭園面積 800坪 (中規模)
    抹茶など頂ける
    特筆事項 年3回の季節限定特別拝観にて、方丈庭園が公開される。またライトアップイベントもあり。
    作庭時期 不明 ~飛鳥 奈良 平安 鎌倉 室町 安土桃山 江戸 明治 大正 昭和 平成 令和

退蔵院の由来

臨済宗大本山妙心寺の塔頭寺院である退蔵院は、室町初期(1404年)に創建された妙心寺屈指の古刹。境内には元信の庭、陰陽の庭、余香苑、そして通常非公開の方丈庭園と4つの庭園をもつ妙心寺最大の庭園寺院である。






  • 元信の庭 全景

    臨済宗大本山妙心寺は、10万坪に46の寺院を構える広大な敷地であり迷路のような空間だ。そのなかで庭園で有名な寺院といえば退蔵院であり、たびたび書籍でも紹介される。まずは方丈西側にある「元信の庭(もとのぶのにわ)」。室町時代の画家・狩野元信が70歳近くに作庭されたと伝えられる庭である。

  • 元信の庭 図解

    「元信の庭」を図解してみる。築山に鶴島。手水鉢を配した鶴島は、私はこれが初めてみるもので案内板を読むまで気づかなかった。池泉中央部には亀島、その奥に枯れ滝石組、蓬莱山を配置している。視点場は撮影地点から右側であり、方丈の西にある「鎖の間」からとなる。ただ「鎖の間」は、年3回の食事付き特別観賞(予約制)のみでしか立ち入りできない。

  • 元信の庭 枯滝石組

    このため通常、枯滝石組を正面から眺められない。最大の見所である「元信の庭」だけに「鎖の間」の通常公開を切に願う。枯滝石組の上部には観音型の遠山石を据え、栗石で滝の流れを表現している。栗石の扱い方が見事としかいいようがない。

  • 元信の庭 南部

    池泉南部を眺める。右下が鶴島の一部であり、正面に石橋、左手の笹塀奥に集団石組がみられる。

  • 元信の庭 石橋

    枯流に架けられた石橋をズームアップ。石橋は丸みを帯びていて上品さを感じる。周辺の石も同種で纏めているのもセンスを感じるところである。

  • 集団石組

    笹塀奥にある集団石組。

  • 方丈南庭(方丈前庭)I

    方丈南庭は、平坦な苔庭に赤松を植樹したシンプルな庭園。案内板には「禅院の方丈前庭にはよく見られる」と記載されているが、分かりにくいの説明を付け加える。江戸時代までは、禅寺(臨済宗、曹洞宗、黄檗宗)では方丈南庭は大切な儀式を執り行うための場所とされ、石を建てることは許されていませんでした。ところが、 江戸幕府の茶人としても知られる作庭家・小堀遠州南禅寺 金地院庭園などを造らせた以心崇伝(いしんすうでん)が、江戸初期(1619年)に禅宗寺院の最高職になると、この規則がなくなり方丈南庭にも続々と庭園が造られた。そのようなこともあり、禅寺の方丈南庭には白砂だけの庭園などシンプルな庭園が多い。

  • 陰の庭

    続いて、陰陽の庭へ移動。砂の色が異なる2つの枯山水で構成され、合計15石の石で構成されている。写真は「陰の庭」であり、砂紋が深く力強い。また2種類の刈込みと生け垣により枯山水を囲んでいる。

  • 陰の庭

    「陰の庭」には8石の石が据えられている。右上には細い枝がみえるが、こちらは枝垂れ桜であり、桜の花びらが黒系の砂に散った様子も美しい。

  • 陽の庭

    こちらは白砂敷きの枯山水「陽の庭」。枝垂れ桜を中心に「陽の庭」と「陰の庭」が向かい合っており、7石あるのを確認できる。

  • 陽の庭

    苔島に2石を組み、刈り込み沿いに5石の石を据えている。こちらの砂紋は「陰の庭」と比べると浅めになっている。

  • 余香苑

    続いては、昭和の「小堀遠州」と称えられた作庭家・中根金作(なかね きんさく)による「余香苑(よこうえん)」へ。サツキの大刈込みから滝石組へ繋がりダイナミックな遠近感を作り出している。

  • 余香苑の滝石組

    滝上部には遠山石を据えている。三段落ちの滝には、途中に平たい栗石が敷かれ「元信の庭」と同じ意匠が使われていることに気づく。焦点距離180mmの望遠レンズで撮影しているが、肉眼では分かりにくいため、スマホで拡大しながら細部を観察してみると良いだろう。サツキの咲く6月に再訪して、華やかな光景を眺めてみたいものだ。


総評
3つの枯山水と、中根金作による池泉庭園を同時に楽しめる。特に「元信の庭」の滝石組の造形が素晴らしい。桜の時期、ツツジの時期(6月)がハイライトであるが、それ以外の時期でも十分に楽しめる。
×「元信の庭」の視点場となる「鎖の間」が年三回の食事付き特別公開でしか訪問できないため、滝石組を正面から眺められない。


アクセス
京都府京都市右京区花園妙心寺町35
JR「花園」駅 徒歩約7分

駐車場
あり(無料)

開園時間
午前9時~午後5時(受付終了時間)
休園日無し

入園料
一般 600円
小中学生 300円

公式サイト

地図
正門にピンを立てています。
訪問日 2018-12-27 (木) 更新日 2020-04-11



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よくある質問


いつごろ作庭された庭園ですか。
作庭時期は室町初期(1404年)です。
雨でも濡れずに楽しめますか。
いいえ。屋外を回遊する必要があります。
抹茶や珈琲などを楽しむところはありますか。
あります。



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