東院庭園は平城京での宴会や儀式を催した庭園であり、奈良時代に作庭されたもの。昭和47年(1967)に発掘調査され、平成5年(1993)から5年かけて復原整備され、平成10年(2003)に一般公開。平成22年には特別名勝に指定される。
平城京に都を遷した奈良時代に造られた東院庭園は、隣接する平城京左京三条二坊 宮跡庭園と並ぶ古庭園として歴史的価値の高い庭園であり、日本庭園の原型ともいえる。どちらも特別名勝ながら、訪問者も少なく庭園好きには嬉しい環境である。
管轄は文化庁ということもあり、美しく管理され、池の水も巡廻されているため透き通り美しい姿をみせてくれる。池泉は奈良時代後半の大改修を境に前期と後期に分かれる。前期は地底に大きな玉石を帯状に敷き詰め、池泉の形状は単純な逆L字形型。一方後期は小石を敷き詰め、出島や入江が造られた複雑で美しいもの。復元整備では後期を再現している。
中央建物には舞台が設けられ、平橋で繋がっている。
中島と出島を撮影。このような複雑な汀線をもつ池泉の形状が、池泉庭園の最大の魅力だと感じる。その原型が奈良時代に完成しており、今なお変わらないことに驚きを隠せない。
平橋の奥には反橋を掛け、北東建物に続く。そして左手には我が国最古の築山石組がみられる。
池北岸は曲線の洲浜となり、山水の景を造るため築山石組を設けている。古くは「仮山」とも呼ばれ、日本最古の築山石組とは思えない力強さと美しさを感じさせる。洲浜:水際を美しく見せる技法。
築山に垂直に立てられた立石と斜めに組まれた石組がある。復元整備では、遺構は保存のため土の下に保存されているが、一部は露出展示されており、奈良時代の石組が1000年以上の時代を経て今感じとれる貴重な庭園だ。
築山石組と反橋。
前期の遺構と考えられている曲水。基本的には後期を再現している東院庭園であるが、庭園の特徴として重要な要素であるため、前期の曲水を復元している。曲水とは、曲水の宴(ごくすいのえん)を行う庭園であり、貴族が杯が自分の目の前までに流れてくるまでに詩歌を作って詠み、盃の酒を飲んで次へ流すという遊ぶ庭のことである。平安時代に流行したとされるが、日本書紀によると古くは古墳時代(485年)に始まったとされる。
曲水。曲水の代表作が東院庭園であるが、他には平泉の毛越寺がある。また古庭園ではないが、浜松市の万葉の森公園 曲水庭園の記事では、その様子が理解できるので読んでいただきたい。
曲水はなだらかに池泉へと注がれる。
駐車場が無料完備で入園料も無料の特別名勝は、おそらく東院庭園だけではないだろうか。平城京の中心地から離れた場所であるため、庭園好きしか訪れないような空間だ。
東院庭園 案内図(パンフレットより引用) [ 案内図を拡大する ]
○ | とにかく洲浜が美しく、池泉だけを眺めていても満足できる庭園である。また、奈良時代の庭園を忠実に再現しており、一部現物の石を露出展示しているのも価値が高い。 |
× | 特に見当たらない。 |