古墳時代(458)に雄略天皇の勅命により創建したと伝わる湯島天満宮。江戸時代には幕府の庇護を受け、天神信仰の中心となり、学問の神様として知られる菅原道真(すがわら の みちざね)を祀るため、合格祈願の神社で親しまれている。境内には箱根・翠松園や本田宗一郎邸の庭園を手掛けた安諸定男によるもので平成19年(2007)に作庭された。
都内で常時公開されている知られざる名園を挙げるのであれば、湯島天満宮(湯島天神)庭園を紹介したい。湯島天神といえば「学問の神様」で知られる有名神社であるが、公式サイトには紹介されていないが池泉回遊式庭園がある。作庭者は安諸定男氏であるが、一般公開されている庭園は非常に限られているため、知る人ぞ知る作庭家だ。
訪問時は庭園内に立ち入ることができなかったが、園内を廻遊できたときに撮影されていた方が運営する「造形礼賛」では、本滝石組は鯉魚石を配しているとのこと。当方の写真では滝壺に突き出た岩がみえるが、これが鯉魚石である。つまり滝石組は龍門瀑(りゅうもんばく)ということになる。なお鯉魚石とは、中国の鯉が滝を登ると龍になるという故事「登竜門」にちなんだ鯉を石に見立てたものである。もちろん鯉が滝を登るようなことはできないが、ひたすら修行を繰り返すという禅の理念を石組で表したのを「龍門瀑」と呼ばれる。
舟石も美しい。
右手に龍門瀑を望む。
違う角度から龍門瀑をスローシャッター(SS 1/10)で撮影。滝石組も小型ながらも、水落石を複雑に組み合わせることで、何本もの水流が流れ落ちる美しいものだ。
自然石のみで構成された延段は「草の延段」と呼ぶ。また州浜も延段と同じ大きさの自然石で構成されている。
本庭園で龍門瀑の次に注目したいのは、こちらの石橋だ。長い切石、円形の岩島、そして自然石と3つで構成されている。石橋の奥には置き灯籠を配し、全体のバランスが絶妙である。
土橋と延段のつなぎに巨石を配置するのも新しい技法にみえる。ぜひとも園内にはいれるタイミングで訪問して詳細を観察してみたいものだ。
○ | コンパクトながら品格を感じる龍門瀑、三連の石橋など優れた意匠をもつ池泉庭園である。 |
× | 特に見当たらない。 |