佛通寺は室町時代(1397)に創建した臨済宗佛通寺派の大本山。夢窓疎石の弟子であった愚中周久によって開山。県内屈指の紅葉名所として知られると共に、雪舟作と伝えられる崑崗池(こんこういけ)が残る。雪舟が佛通寺に滞在したのはほぼ史実であるが、雪舟作と伝わるが定かでは定かではないとのこと。また本堂前と中庭に枯山水を設けている。
縁あって佛通寺の宗務総長・神田様とお知り合いになり佛通寺をご案内頂くことに。まずは佛通寺川に架かる巨蟒橋(きょもうきょう)の向かいにある崑崗池(こんこういけ)から見学。
雪舟作と伝わる庭園であるが、これまで見学してきた雪舟庭と作風が異なり、説明無しでは雪舟庭と気づかないだろう。また公式サイトでも、庭園専門家の意見として池の構造はあまり原型を留めていないと記載されている。
東西に穿った崑崗池での見どころは自然石の石橋である。
2石の巨石を用いた石橋で構成されている。石橋は水平や山形の形状はよく見るが、直線の傾斜になっているのは実に希有だ。また道路側の護岸石組も低く目立たないが、変化に富んでおり、かつ苔付き風合いを感じさせる。
石橋の上面は往来しやすいように平面でありつつ、 側面は手前は力強く、奥は細く見えるような意匠になっている。これによりシンプルな池泉にも関わらず、石橋ひとつで全体が引き締まるから不思議なものだ。
山畔側より崑崗池を眺めるとハート型にみえるポイントもある。
崑崗池に注ぐ滝が作られている。銀九瀑と呼ばれ、中国の詩人・李白の詩の一節「銀河九天より落つ」から命名されたもので、滝石組ではない。
巨蟒橋(きょもうきょう)から眺める佛通寺川沿いの紅葉。佛通寺川は活龍水と呼ばれ、佛通寺本寺の結界とのこと。
木々と山並みで囲まれた境内に、最小限の石組と松で構成されたシンプルな枯山水は安らぎを覚える。
砂紋は毎朝清掃していると思われる美しさ。
中庭に作られた一般拝観はできない愚徳庭(ぐとくてい)を特別に拝観させていただいた。庭園名は佛通寺を開山した愚中周久(夢窓疎石の弟子)にちなみ、愚中の徳を慕うところから命名。左手前の石は入舟石だ。蓬莱山から不老不死の妙薬を積んで戻る舟を摸しており、宝の重さにより大海に沈み込んだように深く埋められている。すると、苔島の立石が蓬莱石となるのだろう。
以前は雑木林の如しであった中庭を神田総長の陣頭指揮により山内の僧侶のみで作庭し、現在の枯山水に生まれ変わったとのこと。
撮影にあたって水をまき、砂紋を新しく曳いていただいた。やはり流水により石が艶やかになり、苔が活き活きとする。(本写真は神田総長にて撮影)
佛通寺は県内屈指の紅葉の名所であり、訪問した平日でも10時過ぎには駐車場待ちが発生していた。朝イチで訪問することをお薦めしたい。
○ | 崑崗池に架かる自然石の石橋は眺める角度によって美しさが変わり、シンプルな池泉を引き締めている。 |
× | 特に見当たらない。 |