大蓮寺は室町時代(1544年)に創建された浄土宗の寺院。庭園は日本庭園協会の吉河会長により1977年、1991年、1999年、2001年の四回にわたって作庭された。
千葉県には日本庭園協会の吉河会長により作庭された庭園が4つあるが、一般見学可能であるのは写真の前庭(二十五菩薩来迎之庭)と池泉庭園のふたつである。
前庭の二十五菩薩来迎之庭(ぼさつらいぞう)。意欲的な立石で組まれた三段落としの枯滝石組。枯滝の奥にある主石と滝添石によって弥陀三尊(阿弥陀如来、観世音菩薩、大勢至菩薩)、意欲的な立石で二十五菩薩を見立てている。
枯滝石組は枯流れとなり、栗石が敷き詰められている。切石による石橋を架け4ヶ所に橋添え石を据えている。橋添え石は、橋に安定感と躍動感を与える役割がある。
枯流れは枯池となり、枯池は着物などの模様で使われる瑞雲(ずいうん)の形となっている。ちなみに瑞雲とは、めでたいことが起こるという前兆を表す雲を図案化したものである。ただ、多くの池泉庭園にある「心」の字になっている「心字池」と同様に、瑞雲の形を明確に識別することはできなかった。
水琴窟の蹲居(つくばい)が設けられている。蹲居は隣接する茶室へ向かう際など、身を清めるために造られていることが多いが、こちらは近くに茶室がないため観賞用だろう。
鐘楼横には池泉庭園があり、仏の教説を書きとどめた経典にある東方世界の浄土「瑠璃光浄土」を表現。
池泉庭園の北側には薬師三尊を中心とした二段の滝石組がある。滝石組の形式は、伝い落ちで深山幽谷(しんざんゆうこく)から流れ落ちる神秘の滝を表現しつつ、その浄水によって、病気を治癒する意味が込められている。深山幽谷:人が訪れないような奥深い自然の地
鐘楼からの前庭を改めて眺める。広くない敷地を立体的な魅せる石組であり、知られざる枯山水だと感じた。
○ | 周辺に本格的庭園がないエリアでは貴重な庭園である。特に枯滝石組は意欲的で見応えある。 |
× | 前庭の枯流れに栗石が敷かれているが、コンクリートで固められていること、および池泉庭園に配水管がむき出しになっているのは少々残念。 |