煮干しの節を機械的に削り、紙袋や紙箱に入れて「削り鰹」の商品名で日本で最初に発売した福山市の海産物商・安部和助の個人別荘として建築。現在は福山市の公共施設として開放されている。庭園は京都の作庭家西村氏の指導により10年の歳月を費やし昭和初期に完成。
日本100名城「福山城」を望む福寿会館には、昭和初期に建築された和館、洋館、日本庭園で構成されている。和館と洋館は貸し切り利用されていなければ自由に見学できるが、取材日は予約済みで日本庭園のみを見学することに。
福山城を望む日本庭園は、枯山水と露地と小さな池泉庭園で構成されており、日本庭園の三要素を全て観賞できる。
まずは枯山水。推測の域をでないが池泉庭園に繋がる水路に玉石を敷き詰めており、かつては水が流されており、現在ではメンテナンス性から枯流れとしたのではないかと想像する。
枯流れの上流に向かって撮影。奥には切石橋があり、切石橋より上流から様子が変わっていく。
その様子がこちら。玉石の割合が徐々に砂利石へと変わり、水流の変化に見立てられているように感じる。
上流部は枯滝石組となっている。寄り添うように石が組まれ渓谷のような雰囲気を醸し出している。ちなみに滝の近くは大きめの石を敷くことで水の勢いを表現し、徐々に小石となっていくほうが自然にみえるが、敢えて逆にしているのだろうか。
茶室に移動して露地を見学。外露地と中露地で構成され、それぞれに腰掛待合を設ける本格的なもの。茶室からは飛石で蹲踞(つくばい)への導線も設けている。
蹲踞は谷に手水鉢を配置して、前石の左右に湯桶とと明かりを置く役石があり、さらに手水鉢を取り囲むように石を配列している・
池泉はごく小さなもので特筆するものがないが、舟石らしき岩島を見つけた。
二石組が実は滝添石になっており、小さな枯滝石組となっていることに気づく。滝口からは渓谷風に枯流れを作っている。
自然石を使った大きな石灯籠。福山駅に隣接した福山公園では福山城と昭和初期の日本庭園が見学できる。福山城だけでなく福寿会館も訪れて、削り鰹節で冨を得た安部和助の個人別荘も巡って欲しい。
○ | 新幹線停車駅から徒歩5分圏内で本格的な日本庭園を楽しめる唯一の庭園。外露地と中露地を繋ぐ中門には江戸時代の茶人・金森宗和の考案したといわれる中潜りもあり、品格のある露地を楽しめる。 |
× | 池泉庭園周辺の植栽や木々がかなり密集している。護岸石組が見える程度に伐採すると一段と良くなると感じた。 |