臨済宗建長寺派の寺院である宝徳寺は室町時代に創建。その後荒廃するが、江戸中期に再興。庭園は平成12年(2000)に住職にて作庭。平成28年(2016)より磨き上げた床に紅葉が反射された様子が美しい「床もみじ」の拝観イベントが始まる。また令和3年(2021)には石と白砂だけの石庭が、苔島のある石庭に生まれ変わる。
初めて訪れた2019年8月から5年以上ぶりとなる2024年11月30日(土)に再訪問。今回は「秋の床もみじ特別公開」での紅葉リフレクションを拝観目的。開門10分前に駐車場へ到着するが、キャパの少ない第1、2駐車場は早くも満車。第3駐車場は収容能力が広く余裕があった。第三駐車場から報徳院までは徒歩5分ぐらいだろうか。ただ、開門待ち行列が100人ほどいる。しかし、進みは良く、開門15分後には境内に入ることができ、11時頃には行列もなくなっていたので、朝イチだけ混み合うのだろう。
本堂に向かうと、まずは中庭の石庭「滴水の庭(てきすいのにわ)」が現れる。こちらは本年(2024年)に作庭されたばかりの枯山水で、重森三玲よって作庭された東福寺 本坊庭園(八相の庭)を思い出させる市松模様の意匠だ。
ミニチュアのような手水鉢は、四面に仏体が刻まれた四方仏の蹲踞(よほうぶつのつくばい)だろうか。映えを狙ったような枯山水にみえるが、このような細かいところが本格的であるのが嬉しい。ちなみに石灯籠に色つきのガラスをはめ込んでいるが、これは市松模様の苔と白砂敷きに対峙させることを意識したのだろう。
市松模様の苔と枯池が見事に融合しており、ありそうでなかった意匠で嬉しくなってきた。ちなみに滴水の庭の意味は、公式サイトで「水滴りて石をも穿つ(みずしたたりていしをもうがつ)」という言葉があります。わずかな水滴でも絶えず落ち続けると、固い石にも穴をあけるという意味です。この庭は「継続は力なり」を伝える庭と説明されていた。
床もみじを拝観できる方丈に到着。まずは立って撮影すると、このように紅葉と枯山水を眺められる。ちなみに石庭は令和3年(2021)に改変されており、かつては「3・3・1」の石組であった。かつての石庭の様子。
そして「床もみじ」を撮影する。この床はかつて漆に似た光沢のあるカシュー塗料で仕上げられていましたが、鏡面化するために塗装を何層にも重ね、磨き上げている。この作業は地元の工務店「ふくろうはうす」にて作業が行われ、床の施工作業について記事化されている。
別角度からは、襖絵「双龍」があり写真は「雲龍」となっており、「雲龍」もリフレクションしている。反対側に襖絵「海龍」があるが、こちらは拝観客のスタンバイエリアとなっているため、撮影が難しい。
床もみじ。なお反射する床は28畳の広さである。
ここまで美しいリフレクション紅葉を掲載してきたが、現場はこのように多くの人で取り囲まれた状態になっている。時間制限はなく、数枚撮影後に、また場所を移して撮影することができるため、おもったよりじっくりと撮影できた。スマホで撮影している方は、比較的短時間で捌けていた。なお、床の左右で光りがあたっているところと、影になっているところがあるが、リフレクションする領域はカメラの手前になるため、時間帯によってリフレクションする側の撮影に影響がでることはないだろう。
令和3年(2021)に、石と白砂のみの石庭から、禅の庭「碧層々の庭(へきそうそうのにわ)」に生まれ変わる。こちらは鶴亀蓬莱庭園となっており、左奥に亀島、右奥に鶴島を設けている。特別公開時期は方丈前の縁側が通行できず正面から見学できないため、「碧層々の庭」を楽しむためには通常時期に訪問するのが良いだろう。
花頭窓(かとうまど)からの撮影にも行列ができていた。
花頭窓から碧層々の庭を撮影。右手前の苔島は滝と枯流れのような意匠をもっているのが新しい。なお方丈奥には池泉庭園もあるが、通行禁止になっていた。2019年に訪問したときは廻遊できたので、特別公開時期のみ閉鎖されているのだろうか。
池泉庭園と本堂を望む。ちなみに「碧層々の庭」を取り囲む壁は、かつては生け垣だった。
○ | 机ではなく、床に反射した紅葉を楽しめる「床もみじ」の拝観と撮影を楽しめる。この規模で楽しめる施設は全国で唯一であり、鏡面化された床により満足度が非常に高い。 |
× | 特に見当たらない。 |