東北三大地主と称された池田家の邸宅庭園。明治29年にはM7.2の陸羽地震による主屋の倒壊を契機に、屋敷を拡張して、日本初の公園デザイナーとして知られる長岡安平によって大正初めに庭園が作庭された。平成16年には秋田県の庭園では初めての国指定名勝を受ける。
旧池田氏庭園のシンボルはなんといっても巨大な高さ4mの雪見灯篭。国内最大級と表現されているので、日本一を調べてみると、高さは重量や自然石のみの石灯籠などジャンルによって日本一を名乗っているよう。ただ、日本庭園にある石灯籠としては日本一の大きさであることは、ほぼ間違いないだろう。
全国に近代公園を設計してきた長岡安平の現存する作品は40ヶ所以上あるが、国指定名勝庭園を受けているのは本庭園のみとなる。私も本庭園を取材するまで長岡安平のことを知らず、まだまだ庭園知識が不足していることを感じた。
旧池田氏庭園は主庭園と奥庭に分かれており、巨大な雪見灯篭がある庭園が主庭園となる。池泉に中島を設けて、復元された八ッ橋から雪見灯篭や洋館を眺めながら散策できる。
主庭園と奥庭を繋ぐ敷地には善導寺型灯籠が置かれている。
善導寺型灯籠とは京都市役所近くにある善導寺が元となっており、中台の側面にハート型の刻り込みや、火袋に茶道具が彫られている。ごく希に庭園でお目見えする灯籠で、事例としては新潟県の護国寺などが挙げられる。
奥庭に到着。土橋の先にある沓脱石からは景観の広がりに高低差を感じ取ることができる。
池泉へ繋がる流れを登っていくと、、
段々状の小滝が造られている。とても小振りで巨大な敷地にしては存在感がない滝石組である。
大正11年(1922)に竣工した洋館は、秋田県初となる鉄筋コンクリートの建物。1階は常時開放され、2階部は年数回のガイドツアーにて見学できる。
ビリヤード場越しの雪見灯篭。大正時代に東北エリアで自宅にビリヤードを設けていたというのは大地主ならではだろう。
自由に利用できる上座敷から望遠レンズ(焦点距離125mm/Nikon D810)で撮影。雨を凌ぎながら唯一庭園を見学できるスペースであり、雨天時には有り難い。
旧池田氏庭園の案内図 [ 案内図を拡大する ]
○ | 目立った石組はないが、日本庭園に設置された巨大な雪見灯籠により景を引き締めている。通常、巨大な灯籠はバランスを欠くことが多いが、本庭園では不思議と違和感がそれほどない。 |
× | 滝石組や護岸石組などに特徴がなく、敷地が広いこともあり、雪見灯籠の存在を除くと平凡な庭園にも感じる |