国指定重要文化財の石谷家住宅は、大正8年から10年かけて改築した大規模な木造家屋である。約400坪の石谷氏庭園は平成20年(2008)に国指定名勝をうける。邸宅には4つの庭園があり、枯山水、露地、芝生庭園は大正以降の作庭であるが、池泉庭園は江戸時代とされる。
鳥取市内から無料開放されている鳥取道経由で1時間ほどの距離にある石谷家住宅。一般公開されている鳥取県内の邸宅庭園としては最大規模といっていいだろう。池泉庭園、枯山水、露地、芝生庭園で構成されており庭園好きには堪らない!なお、通常庭園内は立ち入りできないが、春と秋のみ園内散策と茶室を利用できるチケットが販売される。
池泉庭園の上段に枯山水、芝生庭園があるため、まずは上から池泉庭園を撮影してみる。まずは景の中心をなす滝石組に注目。洞窟のよう構造になっており、鯉魚石(りぎょせき)のような石がみられる。庭師に確認してみれると鯉魚石ではなく、滝壺の落水を受ける水受石であり、これにより水飛沫を発生させて、池に空気を混入させて鯉に酸素を与えているとのこと。鯉魚石については、鹿苑寺庭園(金閣寺)の記事を参考にして欲しい。
池泉東部を眺めると出島が造られている。入江を取り囲むような集団石組は見事で圧倒される。
池泉南部には茶室が造られ、切石による石橋がかけれ、池泉南東部にある苑路に繋がっている。
石橋から滝石組を望む。上部から眺めた写真と照らしあわせると、写真右手には出島による岩山、そして2ヶ所の入江で構成された複雑な地形をした池泉であり、これにより景観の奥行き感を生み出している。
昭和18年に改築された江戸座敷より池泉庭園を眺める。おそらく池泉庭園における最高の視点場であり、池泉の広がりを感じとれる。
続いて枯山水へ移動する、まず全景を確認するため、石谷家住宅の2階から撮影。枯山水といっても砂はなく、芝生による石庭と表現したほうが正しいだろうか。また写真の左手が芝生庭園となる。
芝生の石庭(案内板には枯山水と記載されている)に近づいて観賞。巨石による護岸石組が迫力あり、また切石による石橋も架けられている。
芝生庭園へ移動。集団石組と整備されたツツジの刈込みが景の中心をなす。右手にある石段で塀の外に設けられた小さな庭園も観賞できるようになっている。
石谷家住宅に戻り、中庭に造られた観賞。こちらにも池泉が造られ、コンパクトに纏まった品格を感じる庭である。
左手に和室応接、その和室応接に隣接した中庭を眺める。
秋の庭園特別公開のときに公開される茶室から、池泉庭園を眺める。
紅葉シーズンということもあり団体客もいたが、抹茶券を購入している方は少なく、落ちつて観賞できた。なかなか訪れる機会のない智頭町であるが、再訪したいと思うだけの魅力ある庭園だった。
石谷氏庭園の案内図 [ 案内図を拡大する ]
○ | 段差を利用した地割で、下段に池泉庭園、上段に枯山水という構成は希有。私の知るところでは西芳寺(苔寺)ぐらいだろうか。 |
× | 春・秋の庭園特別公開日以外の日に訪れると、庭園を十分に満喫できない。 |