光明院は室町時代(1391)に建立された東福寺の塔頭(たっちゅう)寺院。 波心庭と名付けられた庭園は、モダンな庭園造りで知られる日本庭園史の研究家・重森三玲(しげもりみれい)により、昭和14年(1939)に作庭。同時期に東福寺の方丈庭園も作庭。塔頭寺院:高僧などを慕った小院
東福寺から徒歩5分ほど離れ、またガイドブック未掲載なこともあり、重森三玲の作品を拝見できる寺院としては穴場感がある。とはいうものの、受付には英語/中国語の表記もあり外国人もここを訪れていることが分かる。
まずは東側の築山に組まれた三尊石を撮影。三石とも立石であり山形の意匠である。後ほど紹介するが、波心庭には北・南・東の3ヶ所に三尊石が組まれ、庭全体としても三尊石を構成する極めて珍しい枯山水である。
苔築山の洲浜には玉石が敷かれ(赤枠で囲む)、波飛沫を表現。このような意匠は私は初めてお目にかかる。
桜を愛でる座敷「観庭楼」から。ここからだと、波心庭には北・南・東の3ヶ所に三尊石が確認でき、その位置関係が三尊石を構成するのが分かるだろうか。(分かりやすいように、三尊石には赤線を引いている) それぞれの視点場が異なるため、この視点場からだと三尊石にみえないが、後ほど紹介していく。
こちらが南側に組まれた三尊石。こちらの洲浜にも玉石が敷かれて、波飛沫が表現されている。また、庭園に据えられた石は全体的に立石であることも分かる。
本堂から東側の三尊石を眺める。
書院から額縁庭園を撮影。ガラス戸の上半分が擦りガラスで下半分が窓となっていている。また、庭園の借景にはサツキが刈り込まれ、これは雲を表現しているとのこと。
窓ガラスを開けてみるとこのような額縁庭園が広がる。網代組(あじろぐみ)の吉野窓からは、南側の三尊石を確認できる。
直線と曲線を組み合わせた意匠であり、モダンな庭園作りで知られる三玲らしい作品だ。東福寺「八相の庭」と光明院「波心の庭」は、三玲初期の名作といわれる。
書院からの眺め。石が多様されていることがわかる。大小あわせて75石もあるそうだ。
観庭楼から二方向に庭園広がる「W額縁庭園」を撮影。W額縁庭園:私の造語
書院と本堂の廊下から波心庭の主石でもある三尊石を望む。
最後は北側にある三尊石。こちらの洲浜にも玉石が敷かれて、波飛沫が表現されている。正直、このような意匠は説明を受けないと気づかないと思われる。
○ | 3つの三尊石で、庭園全体を三尊石で構成する極めて珍しい枯山水である。混雑を幾分回避できる庭園であり、落ち着いて名庭を観賞したい方や、額縁庭園を撮影したい方に特にお薦めだ。 |
× | パンフレットがないため、誰もが魅了される庭園ながら庭園を理解することが難しい。 |