温山荘園は日本初の伝動用の革ベルトで財を成した新田長次郎の別荘である。大正時代から昭和にかけて造営され、江戸時代以降に作庭された個人庭園としては日本最大。昭和半ばには一般開放される。平成22年(2010)には国指定名勝庭園となる。
冬季閉鎖している個人の別荘であった温山荘園、庭園巡りを始めて6年目にようやく訪問。明治時代以降の個人庭園として日本最大の広さを堪能してみることに。まずは東池越しに重要文化財の本館を撮影。
大正4年(1915)に建築された数寄屋造りの本館から庭園を眺める。内廊下の板間は大木の一枚板で作られた立派なものである。ちなみに、本館と浜座敷(取材時は工事中で見学できず)はこちらは入園料とは別に100円必要であり、退園時に自己申告して支払う方式になっている。
24畳の座敷からの額縁庭園。
数寄屋風の北冠木門(きたかぶらきもん)。枝打ち跡を残した丸太を用いた柱に、中央を桟瓦・軒を銅板で葺いた勾配の緩い屋根に特長がある。
巨大な雪見灯籠は、国指定名勝「旧古河庭園(東京)」を思い出させる。奥の橋は三連の石橋が印象的である。
茶室「鏡花庵」は造園を指導した武者小路千家の茶人・木津宗泉の指導による設計。こちらは内部は見学できないがガラス戸のため内部を確認できる。
つづいて西池へ。中島には石橋を架けており、その石橋が見どころである。
北側にかけられた石橋は長寿橋と呼ばれ、青石の一枚岩でできた長さ8.9mの名石。この石橋に匹敵する石橋は、徳島市の国指定名勝「旧徳島城表御殿庭園(千秋閣庭園)」や、福井市の国指定名勝「養浩館」などであり、如何に名石であるかがわかるだろう。
長寿橋。
西池に打たれた沢飛石。沢飛石の奥にはトンネル之口亭があり、無料でお茶をいただけるのが嬉しい。
こちらの庭園は潮の干満によって水位が上下する潮入式池泉回遊式庭園となっており、国指定名勝「養翠園(和歌山市)」など全国に4例しかない。庭師に伺ったところ、満潮時には沢飛石が沈むとのこと。
沢飛石。
大正時代の手堀りトンネルで、新田長次郎のプライベートビーチへと繋がっており、入園者はこちらを通行できる。
琴ノ浦 温山荘園の案内図(パンフレットより引用) [ 案内図を拡大する ]
○ | 青石の長寿橋や、沢飛石など西池に見どころがある。また東屋に無料でいただけるお茶(ホット、アイス)がある心遣いも嬉しい。 |
× | 広大な敷地が故に、景観が単調となる区間が多い。 |