旧座主院御下屋庭園とは、英彦山の最上位の役職であった座主(ざす)の住居「座主院」にあった本坊の下段に位置する庭園である。作庭時期は不明だが地割りなどから安土桃山時代に作庭されと推測する。現在は九州大学農学部附属 彦山生物学実験施設となっており、九州大学農学研究院への事前申請により見学可能となる。令和元年に既に国指定名勝庭園である旧亀石坊庭園に加えて、本庭園も追加指定され合計7ヶ所の庭園が「英彦山庭園」という総称で登録された。
国指定名勝庭園の「英彦山庭園」の一連の庭園群のひとつである旧座主院御下屋庭園。九州大学農学研究院への事前申請により見学可能となる。長い石段を登っていくと、平屋の施設が見えてくる。施設から手前50mほどの右手に旧座主院御下屋庭園があるが、案内版などないので分かりにくい。
この御下屋庭園だが、英彦山庭園の旧亀石坊庭園と地割りがとても類似している。
まずは亀島と鶴島の位置関係と意匠だ。枯池に伏石を置き、伏石の隣に岩島を据えた亀島。そして一見亀島のようにみえる鶴島は出島となっており、出島には鶴羽石と思われれる巨石を据えている。参考)旧亀石坊庭園
亀島(亀出島)。
鶴島(鶴出島)も力強い石組だ。
亀島、鶴島を別角度から撮影。鶴島と亀島の間に岩島があるところも旧亀石坊庭園と同じである。
そして亀島の左手には二段落としの枯滝石組がある。その構図もまったく同じで、上段は滝添石が大きく水落石は細くなっている。そして護岸石組を兼ねた下段の滝石組。滝石組の先には、水を左右に分ける水分石という類似ぶりだ。
二段落としの滝石組。木の根は作庭当初は当然なかったものだ。石組の保存状態が良いので、木を除去して整備することで当時の様子が復元できるだろう。
築山上部には斜面にそって傾斜をつけた石となっており、こちらも旧亀石坊庭園の枯滝石組と類似している。雪舟が携わった庭園と推測したくなるぐらいの庭園である。
九州大学の敷地内にある2つの庭園は事前許可制であるため、それ以外を巡るのであれば、お薦めはスロープカーで登ってから、下りながら庭園を巡っていくルートである。なお、九州大学の敷地にある庭園2ヶ所を巡るには40分ほど時間が必要と考えたほうが良い。 [ 案内図を拡大する ]
○ | 雪舟四大庭園「旧亀石坊庭園」と類似した枯山水。整備されれば、英彦山庭園では旧亀石坊庭園と並ぶ名園となること間違いない力強い庭園である。 |
× | 特に見当たらないが、見学にあたっての手続きが一般公開されていないため、見学のハードルがやや高い。 |