湖東三山のひとつに数えられる西明寺は、平安時代初期(834)に創建された天台宗寺院。本堂は鎌倉時代の代表的な建物で、国宝第一号に指定されている。本坊庭園「蓬莱庭」は国指定名勝となっており、江戸幕府の茶人としても知られる庭園デザイナー・小堀遠州(こぼりえんしゅう)の庭を手本にした小堀遠州流の庭園といわれる。
蓬莱庭の全体像を把握するため高台から撮影。池泉には2つの中島があり、手前が亀島、奥が鶴島となっている。
亀島には荘厳な石橋が架けられている。初見では亀島と理解しにくいだろう。
こちらが鶴島。パンフレットには「折り鶴の形をした鶴島」と表現されているが、植栽が伸びきっており、その姿を確認しにくいのが残念である。
三尊石。パンフレットには「薬師如来、日光、月光の三尊仏を表す立石」と表記されていることから、中央の立石が薬師如来で、両サイドは薬師如来をサポートする太陽と月の光の象徴である日光菩薩、月光菩薩(がっこうぼさつ)だろう。
画面中央の立石。下に向かって細くなる石は、安定感に欠けることもあり、日本庭園で使われることは極めて珍しい。「茶の湯的 ・ 建築 庭園 町並み観賞録」によると、枯滝を表現している石という説も。
階段横には枯滝石組がみられる。青ラインが枯滝石組であるが、巨石は使われていないものの、とても美しい意匠である。
山畔(やまくろ)には無数の立石が組まれていて、心字池前から眺めると奥行き感を生み出している。
蓬莱庭を登っていくと、苔庭がお出迎え。石組の多い蓬莱庭と違いこちらは石はごく僅か。
護岸石組は控えめながらも高さが揃えられて、全体としての纏まりがよい。
苔庭に据えられた品の良い石に重厚感を感じる、また池泉には丸石で島を表現しているのだろうか。なんとも優美な光景である。
池泉には流れが設けてあり、石の少ない苔庭にひときわ目立つ立石を据えている。
苔庭と紅葉に囲まれた美しき苑路。
国宝の三重塔。苔好きには堪らない日本庭園だろう。湖東三山では金剛輪寺と甲乙付けがたい名園といえるだろう。
○ | 石と苔の美しさに魅了される。混雑する紅葉時期を外して、苔の映える梅雨時期に訪れてみるのも良いだろう。 |
× | 蓬莱庭の鶴島の植栽が伸びきり、石組がよく見えない。 |