日蓮宗の大本山・池上本門寺(総本山は身延山 久遠寺)。この地は日蓮聖人が鎌倉時代(1282)に生涯最後の20数日間を過した霊跡である。池上本門寺の奥庭となる「松涛園」は、江戸幕府の茶人としても知られる庭園デザイナー・小堀遠州の作庭とされる。昭和62年(1986)には、名古屋の徳川園などの庭園作庭に携わった作庭家・伊藤邦衛(くにえ)により改修整備された。
庭園を語る上で外せない小堀遠州が作庭したといわれる松涛園。都内で小堀遠州の庭園を楽しめるのは浅草の伝法院と、皇居東御苑 二の丸庭園ぐらいである。通常は朗峰会館から遠目に眺めるだけであるが、GWや9月など年数日だけ一般公開される。なお松涛園の入り口は朗峰会館であり、朗峰会館前に無料駐車場が完備されている。
「松涛園」でひときわ目を惹くのが亀島。これほど分かりやすい亀島はそうそうお目にかからない。ちなみに右端にある岩が亀の頭にみえるが・・・
実は亀島ではなく舟石(ふないし)。この世と不老不死の仙人が住む神仙島を行き来する宝舟を表現したのが舟石と呼ばれる。ちなみに、亀島の先端には亀の頭を表した岩があるが、亀の頭にとても似ている。
舟石を反対側から撮影。松涛園で舟石について述べられることは少ないが、舟石の名品とされる京都の大仙院庭園と肩を並べる名石だと思う。
平成4年に完成した茶室「浄庵」には、灯篭型の給水器が設置されている。その意匠がなんともユニークで
このように、ひょうたん型の蛇口になっている。
松涛園には規模の大きな枯滝石組も見られる。当時、水流れていたかは不明。もし当時流れていて、水源が無くなったのであれば「涸れ滝石組」と呼ぶのが正しい。滝石組の種類としては、水が岩肌を伝わらず離れて落ちる「離れ落ちの滝」だろう。
先ほどの滝石組から下流を眺める。
茶室「鈍庵」へ繋がる露地門(ろじもん)。
露地門から続く石敷の模様が面白い。なにを表しているかは理解できなかった。
茶室「根庵」にある手水鉢。手水鉢の手前には手燭石(夜の茶会で使う手燭(てしょく)という明かりを置く石)、奥には湯桶石(茶室で使う湯桶を置く石)、右手に手水を使うための乗る前石がある。 手水鉢、手燭石、湯桶石、前石をあわせて、蹲踞(つくばい)と呼ぶ。
案内マップには「魚見岩」と記載。この場所から眺める亀島と舟石が最も美しく感じるため、庭園を見渡すビューポイントである「礼拝石」と考えてもいいだろう。
最後に礼拝石から、舟石と亀島を望む。これを眺めるためだけに松涛園に訪れる価値があると思う。
松涛園案内図 [ 案内図を拡大する ]
○ | 見事な亀島と、名石である舟石がハイライト。また、スケールの大きな枯滝組も見逃せない。 |
× | 一般公開が年数日と限られている。 |