明治2年(1869)に材木商「丹波屋」を開業。当時から庭園が造られていたが、現在の庭園は昭和になって作庭された枯山水である。2018年からは、一棟貸しの宿としての営業も開始。
2018年5月に一般公開された丹波庭園。公開は近年となるが、明治時代に作られた日本建築で本格的な抹茶体験や、枯山水の庭園鑑賞を楽しめる。私は時間の関係で庭園見学だけだったが、日本茶を淹れていただいた。
枯山水には、なんと舟石がみられる。関東圏で私の知る限り唯一の舟石ではなかろうか。女将さんの説明では「財宝を積んだ宝船が、もうすぐ岸につくという縁起の良いものである」とのこと。なるほど、とすると蓬莱山から戻る「戻り舟」ということになる。
舟石の後方が沈んだようになっているのは、財宝の重みによるものである。すると、舟石の後方にある巨石が不老不死の仙人が住むとされる蓬莱山と考えるのが一般的だろう。ちなみに舟石の代表格は大徳寺 大仙院書院庭園で見られるため、理解を深めるために参考にして欲しい。
川には沢飛び石で出島と繋がり、丹波屋の初代徳次郎が伏見稲荷(京都)からいただいてきた、稲荷大明神霊を祀った寿徳明神がある。
寿徳明神の土台は富士山の溶岩でできており、溶岩の下部には小さな洞窟がみえる。これは、寿徳明神で祀っている狐さまの休憩スペースとのこと。
苑路に従って庭園奥に向かう。出島を取り囲むように枯流れが造られている。このエリアは明治時代は畑であり、昭和になって庭園として全面的な改修工事を行っており、明治に造られた庭園の面影はほぼないとのこと。
庭園から母家を眺める。2階建てとなっており、1日1組限定の事前予約制でランチを頂ける個室がある。
女将さんの説明によると、水源は石橋の奥にある井戸とのこと。そのためだろうか、水源近くは大きめの丸石が敷かれ、水飛沫の激しさを表現しているように思われる。
丹特庭園は一棟貸しの宿としても営業しているが、チェックインが16時、チェックアウトが10時で連泊不可である。そのため10時~15時の間で庭園の一般見学ができるようになっている。嬉しい配慮だ。
○ | 昭和の作庭とはいえ、舟石も見られる枯山水は貴重な庭園といえる。また本格的な抹茶体験もでき、外国人にも喜ばれそうなスポットだ。 |
× | よく整備はされているものの、敷地面積の割りには植栽がやや多い。もう少し石組に視点が集まるように伐採してもいいように感じる。 |