奈良時代の創建と伝えられる長谷寺は長谷観音とも呼ばれる。江戸時代に中興され、境内には放生池を中心とした池泉回遊式庭園と、平成25年(2013)に写経場として竣工された書院に枯山水がある。
十一面観音菩薩像やアジサイで有名な長谷寺。庭園のイメージはあまりないが、池泉庭園と枯山水がある。拝観受付を抜けると放生池と妙智池があり、滝石組や中島や出島が作られた池泉回遊式庭園がある。
出島には枯山水が作られている。観賞用に整備され、長谷寺の池泉回遊式庭園では一番美しいポイントだろう。
中島も枯山水に仕上げ、伏石と少し高さがあり天端(てんぱ)が平らな平天石(へいてんせき)を据えて、周辺をタマリュウで着飾ったモダンな形式である。
立石をふんだんに使った滝石組。
2013年に竣工した書院。予約制の写経場となっているが、庭園の見学は自由にできる。ただ門に「予約制」と表記されているためか、この門をくぐる観光客は私ぐらいであった。
門をくぐると時代を超えたモダンな空間が広がる。円形の敷石は美しく、左右に広がる枯山水をぐるっと見渡せるようになっている。
北部を望むと、美しい曲線美をもつ野筋に苔を貼り複数の巨石を立てている。砂紋は水紋を多用しており、渓谷を流れる河川を表現している。手入れに手間のかかる、こだわりをもった枯山水だ。
角度を変えて眺めると、その美しさが際だつ。
南部は中島も作られている。植栽も涼しげで爽やかな刈り込みが施されている。
飛石と延段を組み合わせた苑路で、細部にまでこだわりをみせている。
幸福のシンボルである「卍」の形をした卍池(まんじいけ)。傍には水を掛けると幸福になるとされる「水かけ地蔵」も。
観音ミュージアムの隣にある清浄池。護岸石組で囲まれた2つの中島が作られている。
清浄池には河川の形状をした枯山水が作られている。
長谷寺案内図。枯山水は書院にあります。 [ 案内図を拡大する ]
○ | 近年作られた枯山水であるが、鎌倉では最高峰の意匠とおもわれる。多くの観光客が訪れる長谷寺でも、ここだけは穴場になっている。 |
× | 見事な枯山水に比較すると、池泉庭園は魅力に乏しい。 |