旧亀石坊庭園は室町時代に雪舟によって作庭された「雪舟庭園」として知られ、昭和3年(1928)に国指定名勝を受ける。福岡県と大分県の境にある標高1200mの英彦山(ひこさん)にあり、古来より神の山として信仰された霊山である。
古庭園が点在する英彦山(ひこさん)で国指定名勝庭園となっている旧亀石坊庭園。雪舟がこの地を訪問したことと、雪舟庭園とされる常栄寺庭園(山口市)、万福寺庭園(島根県益田市)、医光寺庭園(島根県益田市)と技法が共通することから雪舟庭園と伝わり、この4つの庭園を「雪舟四大庭園」と呼ばれている。
訪問日は小雨が降るなかで、石段が多い英彦山の庭園群を巡るのは過酷だった。さて、この庭園を訪問する方は、かなりの庭園通だと思われるため、ひと目みただけで風格を感じとることができるだろう。「雪舟四大庭園」は、いずれも山畔を利用した蓬莱式池庭であり室町時代の池庭の特徴でもある。
図解すると築山には、三尊手法の枯滝石組がある。その右手には水落式滝石組があり、さらに下方には護岸石組を兼ねた滝石組を造っている。
枯滝石組を撮影。主石となる巨石は前方に傾斜しており、滝添石の右手も傾斜を付け、亀頭石風の手法となっている。
滝石組は二段落としであり、下段は護岸を併用した水落式の滝石組だ。また水を左右に分ける水分石(岩島)を据えている。
二段落としの滝石組の上段は、水が流れ落ちる水落石(黒色の石)が極めて細くなっているところに美しさを感じさせる。
水分石を上から眺める。
山畔から伸びて出島になっているところが亀石組であり、向かいの出島が鶴石組である。
出島となったところに巨石を伏石として扱い、かつ傾斜させることで亀頭石のように見立てている。手前の立石となる岩島は、重森三玲によると亀石組の抽象表現ではないかと推測している。
亀石組(亀出島)を正面から撮影。対岸の巨石群が鶴石組(鶴出島)となる。
鶴石組(鶴出島)の出島に据えた巨石は、鶴羽石となるのだろう。
誰でも自由に見学できる場所にありながら、護岸石組も大変優美で保存状態も良い。
最後に亀出島の岩島を撮影。本日は英彦山では6ヶ所の庭園を巡っていくが、訪問される方は次のマップをみてルートを精査してから巡ることをお薦めしたい。
九州大学の敷地内にある2つの庭園は事前許可制であるため、それ以外を巡るのであれば、お薦めはスロープカーで登ってから、下りながら庭園を巡っていくルートである。なお、九州大学の敷地にある庭園2ヶ所を巡るには40分ほど時間が必要と考えたほうが良い。 [ 案内図を拡大する ]
○ | 九州で現在唯一見学できる雪舟庭園であり、護岸石組の美しさ、滝石組の美しさ、鶴出島、亀出島と全てにおいて見事な石組である。(福岡に雪舟庭園とされる魚楽園があるが、2022年現在見学不可となっている) |
× | 特に見当たらない。 |