平田本陣記念館は大名など身分の高い人が泊まる宿に指定された本陣であった本木佐家(ほんさき)の屋敷を、平成元年(1989)に移築・復元したものである。庭園は出雲流であり本木佐家にあったものを復元。
雨のなか前知識なく訪問した平田本陣記念館。庭園観賞ホールに広がる枯山水の端正さに身震いした。大きなガラスのため、近づかないと外と繋がっているような感覚を覚える。
椅子に座ってながめる庭園は、高級旅館のロビーから眺めているような優雅なもの。
本庭園は出雲流庭園とされ、強い季節風を防ぐために築地松(防風林のようなもの)で囲まれ、築山や石組は控えめながら巨大な短冊石や踏み分け石が配置されている。
高く打った飛石は降雪時のことを考えてのこと。そして本庭園の注目ポイントは、飛石の高さを活かして周辺を刈り込みで囲む意匠だ。このような意匠は初めてみるもので、斬新で美しい。
刈り込みは州浜をイメージした曲線を設け美しく、また刈り込みに飛石や短冊石があることで、刈り込み時の作業時の作業場にもなり、まさに用と景を満たしたデザインなのである。
こちらは風合いの異なる巨石と刈り込みを組み合わせている。右上の二石は陰陽石になっている。望遠で撮影してみると、
左が女性器を模した陰石、右が男性器を模した陽石である。陰陽石は子孫繁栄を願った石組で、大名庭園や武家屋敷の庭園でみられることがある。ただ陰陽石が庭園の主石となるような場所に配置しているのは珍しく、またいわれければ陰陽石と認識できないため、このようになっているのだろう。
室内から鑑賞する庭園は雨天がお薦めともいえる。その理由は雨により石が艶やかになり、苔は活き活きとしている。そして日差しがないことで庭園に明暗がなくなり見やすく、写真撮影もしやすい。
飛石の先には巨大な手水鉢がみえる。そこで気づいたのが、出雲流庭園は津軽地方の武学流庭園と似ている要素がある。飛石が大きく、踏み石があり、そして手水鉢は実用ではなく見るためのものになっている。ちなみに武学流庭園は書院からの人の動きをイメージしながら庭園を眺めるのである。詳しくは青森県平川市の国指定名勝「盛美園」の記事を参考にしてほしい。
通常は屋外に出られないが、当日は係の方もいらっしゃるなか、枯山水のなかには入れないが軒先付近を往来することができた。このため、室内からは眺められない視点場からの眺めをお届けできた。写真は庭園南部から北部を撮影したもの。
望遠側で撮影すると、このようになっており、中央に踏み石、奥に飛石、切石、そして刈り込みと巨石が品良く置かれている。
有料での貸し出しとなっている茶室「悠々庵」は、書院造りの4畳半。露地は見学できないが、茶室と庭園を繋ぐ露地は見学できた。
平田本陣記念館の案内図
○ | 出雲流庭園の特徴である高めに打った飛石を刈り込みで囲む、ここでしか見られない意匠は特筆できるものだ。室内からゆっくりと庭園を眺められる環境も素晴らしい。 |
× | 特に見当たらない。 |