世界2,800ヶ所以上の夜景を巡った男が庭園を巡る
国指定名勝

對龍山荘

たいりゅうさんそう
美しさ ★★★
静寂さ ★★
京都府京都市左京区

對龍山荘の由来

對龍山荘のあるエリアは、もともとは南禅寺の境内であったが、明治23年(1890)頃から民間のものとなり、明治29年には明治時代の経営者・伊集院兼常(かねつね)の別荘となった。この時から池泉と流れのある露地が存在していた。その後、京呉服商・市田弥一郎が譲り受け、小川治兵衛(通称:植治)によって明治38年(1905)に現在の姿となった。昭和63年には国指定名勝庭園となる。平成22年(2010)には、ニトリホールディングスが所有し、限定公開されていたが、令和6年(2024年)10月より一般公開された。






  • 池泉

    庭師や庭園ファンの間では知られていた国指定名勝庭園「對龍山荘」。ニトリホールディングスの所有となってからは、期間限定公開がありましたが、撮影はできるがネットでの公開は禁止されていました。そのようななか、庭園を管理する植彌加藤造園の加藤社長から、撮影やネット公開が解禁された一般公開の開始を教えていただき11月に訪問することに。訪問直前に記者会見が行われ、對龍山荘の一般公開がTVや新聞で紹介されたこともあり、開園前には100人以上の行列に。本庭園は大池を中心とした平地部分と、その右手に一段高く設けられた部分の上下二段構成の地割りになっている。

  • 大滝

    對龍山荘は一般公開されるが、公開日は不定日のため公式サイトで確認しておく必要がある。ただ月の半分以上が公開されているため、比較的訪れやすいだろう。ただし1ヶ月前ほどにならないとスケジュールが公開されない。園内は大半が一方通行になっているが、何周してもよい。写真は巨石による滝添石で構成された滝石組で、丸みを帯びた柔らかい石の多用が近代庭園の特徴を示している。(江戸初期以前は角張った力強い石が使われることが多い)

  • 亀島

    水車小屋のある築山に登ると大池に浮かぶ中島の全景がわかる。重森三玲によると「護岸石組や中島内の捨石には、明治の自然風な扱いが見受けられる」と解説しているが、 「明治の自然風な扱い」という表現の具体的な意味は知識不足で理解できなかった。

  • 亀島と鶴出島を図解

    植栽を手入れしている職人に伺うと、中島は亀島であり、亀島に続く切石橋が鶴首石になっているとのこと。つまり鶴亀が向かい合った設計になっており、写真を用いて、亀島、亀の頭を摸した亀頭石、鶴出島、鶴の首を模した鶴首石を図解してみた。

  • 鶴出島と鶴首石

    鶴出島から伸びる2本の霧石橋が鶴の頭を摸しており、一般的には鶴首石(かくしゅせき)と呼ぶ。その向かいにある亀島の護岸石組のひとつが亀頭石となるが、この角度からだと判別が難しいので、次に別角度から撮影した写真を掲載する。

  • 鶴首石と亀頭石

    それがこちらである。右手が鶴首石であり、鶴首石と対峙するように亀の頭のようにみえる亀頭石があるのが分かるだろうか。

  • 芝生広場と四阿

    園内は手入れが行き届いており、排水溝なども目立たぬよう竹で目隠しされるなど、細部にわたって拘り抜いている。この苑路は苔と芝を上手に活用したもので大変美しい苑路が印象的であった。当日は2時間だけの公開だったが、閉園間近になると人もまばらになり、そのタイミングを狙って撮影を行う。ちなみに敷地面積の広い庭園は晴天だと、逆光や影により庭園撮影が難しくなる。撮影目的の場合は曇天や小雨、もしくは夕暮れタイミングなどを狙うのもいいだろう。

  • 陰陽石と對龍台

    書院となる對龍台が池泉に沿って反りだし、その下部は遣水と沢渡りとなっている。ここに子孫繁栄を願う陰陽石があり、左の小滝全体が陰石、對龍台を支える石として陽石が配置されている。そして對龍台の縁側まで反り建つ橋杭型手水鉢は逸品とされている。

  • 陰石

    陰石に見立てた小滝滝全体を陰石に見立てた意匠は極めて希有で、非常に興味深い。おそらく滝壺となっている石が受け皿のようになってみえることから陰石としているのだろう。

  • 陽石

    写真左に右斜め45度に傾けられた石が陽石であり、對龍台を支えている。まさに男性の力強さを表したもので、実用面も兼ねたこちらも極めて希有な意匠である。その右側にある立石が橋杭型手水鉢。

  • 沢渡りと橋杭型手水鉢

    橋杭型手水鉢は、このように對龍台の縁側までそびえ建っている。そして對龍台下には池岸越しに沢渡石を打っており、このような沢渡りも珍しい。

  • 流れ蹲踞

    對龍山荘の茶室には腰掛待合があり、腰掛待合から露地を飛石を伝っていくと、流れ蹲踞(つくばい)がある。流れ蹲踞とは、遣水につくられた蹲踞である。ちなみに遣水に作られた手水鉢は「流れ手水鉢」と呼ばれ、醍醐寺の三宝院などでみられる。この流れ蹲踞には、遣水が作られており、ここの意匠も見どころである。遣水沿いの砂留には、竹で編んだ筒に黒石を詰めた風流なものであり、遣水は石をまばらに敷き詰めて、単調にならないようにしている。

  • 遣水

    遣水のさらに上流部を撮影。自然主義的な要素がみられ小川治兵衛らしさを感じるところでもある。

  • 對龍山荘

    写真では對龍山荘はガラス窓になっているが、他の方の写真をみると通常時は雨戸が閉まっていると思われる。当日はニトリホールディングス社員が内部を見学していたため、雨戸が開けられておりタイミングに恵まれていた。なお建物内部は2025年春に公開される予定であるので、次回は對龍台から庭園を見下ろしてみたい。


総評
對龍台下の沢渡り、陰陽石、鶴出島の鶴首石など、他では見られないようなユニークな意匠が特徴的で小川治兵衛が作庭した公開庭園としては、日本最高峰だと思われる。
×園内の南部にある滝石組の近くに巨石による蓬莱石があるが、木々により弱まっている。国指定名勝庭園であるため、植栽の伐採が難しいため、現状維持となっている。しかし、完璧に近い庭園だけに惜しい点である。


アクセス
京都府京都市左京区南禅寺福地町22
東西線「蹴上」駅 徒歩10分

駐車場

開園時間
公式サイトで確認

入園料
2,000円

公式サイト

地図
正門にピンを立てています。
訪問日 2024-11-19 (火) 更新日 2024-11-24



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よくある質問


いつごろ作庭された庭園ですか。
作庭時期は明治(1905年)です。
雨でも濡れずに楽しめますか。
いいえ。屋外を回遊する必要があります。
抹茶や珈琲などを楽しむところはありますか。
残念ながら、ありません。



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