旧安田楠雄邸庭園は、大正8年(1919)に豊島園の創設者・藤田好三郎によって作られ、大正12年からは安田財閥の創設者・安田善次郎の娘の夫・善四郎氏が代々住まう。平成7年に当主・安田楠雄が亡くなったあと公益財団に寄贈し、修復工事が行われて平成19年(2007)に一般公開。平成10年には東京都の指定名勝を受ける。庭園の作庭時期は不明であるが、邸宅が作庭された大正時代と推測。
Facebookのコミュニティグループ「日本庭園」の第1回オフ会にて訪問した庭園。東京都指定名勝ながらも庭園を見学できるスポットとして知られておらず、都心の穴場スポットだろう。
本庭園は「秋の東京いい庭キャンペーン」期間のみ苑路が開放されているが、普段は開放されていない。
訪問直前まで豪雨であったこともあり、苔が活き活きしている。また曇り空で庭に明暗が発生せず、見学にも撮影にも適したタイミングとなった。
茶の間からの1枚。左手が残月の間であり、都内にある限られた空間に作られた邸宅庭園とは思えない広がりを感じられる。
苑路を回遊できないため分かりにくいが、茶の間からは枯滝石組を観賞できる。滝添石は巨石で高く組まれ、滝添石の間には水が流れ落ちる水落石があり、水落石の下部には水を左右に分ける水分石らしき石がみえるが、撮影場所からだと正確なところが分からない。いずれにせよ、茶の間から観賞に堪えうるよう巨石を用いた豪壮な石組であることは確かだ。強いて記載するとモミジにより石組の一部隠れてしまっているのは惜しいところだ。
火鉢に茶の湯の道具などが彫られた善通寺形灯籠が見える。善導寺型灯籠とは京都市役所近くにある善導寺が元となっており、都内では港区の高橋是清翁記念公園で見られる。
茶の間からの1枚。通常は苑路が開放されていないために、額縁庭園が撮影しやすい。
残月の間から撮影。右手が茶の間であり。鞍馬石を思い起こすような沓脱石が立派だ。飛石を進むと善通寺方灯籠や枯滝石組へと導かれる。
敷地は東西に細長く、建物を少し筒ずらした雁行式で設計されていることにより、各部屋から主庭を観賞できる。
雁行式であるがゆえに、写真のように2面に庭園が広がる視点が生まれ、実際以上の広さを感じさせてくれる。
洋室の応接室の外側にはサンルーフを設け、客人などを接客するに相応しい空間に仕上げられている。谷中銀座よりわずか徒歩8分で、静寂さを感じさせてくれる邸宅庭園へたどり着ける。水・土のみの開園であるが、まだ訪問したことが無い方は足を伸ばしてみて欲しい。
○ | いくつもの書院から緑豊かな庭園を見学できる都心の穴場スポット。雨天時は苔が美しくなるので、敢えて雨の日に訪れるのも良いだろう。 |
× | 枯滝石組周辺のモミジにより、豪壮な枯滝石組の存在が弱まっている。 |