福岡玉屋(1999年に閉店したデパート)の創業者であった田中丸善八が、昭和27年(1952)に京都の数寄屋大工によって造られた広間(10畳)と茶室「松風庵」を保存した施設。2005年に再整備され、平成19年(2007)に「松風園」として一般公開される。
福岡の高級住宅街として有名な浄水通りにある日本庭園と茶室を備えた松風園。天神から2kmほどの距離で得られる静寂な空間は、入館料は100円というから驚きだ。
屋外での茶会を野点(のだて)と呼び、この芝庭は野点広場と紹介されている。野点広場は駿河湾と富士山をイメージした日本庭園であり、写真正面の山形の石が富士山に見立てられている。
昭和27年に造られた10畳の広間。
その広間からの額縁庭園を撮影。ここから先ほどの富士山に見立てた石を眺めると、その手前が駿河湾になるというものだ。ただ、中央に障子が寄せられ死角になっている。
そこで場所を変えて撮影。富士山に見立てた石と、駿河湾に見立てた野点広場となる。これは日本平から眺めた光景を再現したのだろう。
広間から茶室「松風庵」を撮影。こちらも昭和27年に建てられた茶室を修復したものである。
茶室「松風庵」から額縁庭園を撮影。右側の小さな入口が「にじり口」であり、左の大きな入口が右側に立ったまま入れる普通の障子による「貴人口」となる。茶室で良くある構造であり、千葉県柏市のあけぼの山公園 日本庭園にある茶室と見比べて欲しい。まったく同じ構造である。
茶室の付随する庭を露地(ろじ)と呼ぶが、こちらは内露地になる。この内露地には蹲踞(つくばい)がある。茶の湯をくみ取りや、身を清める場所とて使われる。その奥には織部灯籠が置かれている。織部灯籠はキリシタン灯籠とも呼ばれ、キリスト像が彫り込まれいることが多い。同じような意匠では、山口市の山水園などでみられる。
こちらは外露地になり、客人が主人を待つ腰掛待合がある。ここから内露地を経由して、さきほどの蹲踞(つくばい)で身を清め茶室に入るという導線になる。また、延段も見逃せない。この延段は切石だけを使った「真」の延段と呼ぶ。他には「草」の延段、「行」の延段があるが、詳しくは長野県茅野市の笹離宮の記事を参考にして欲しい。
松風庵、広間、内露地を撮影。
野点広場を取り囲む苑路。
こちらの野点広場に設けられた延段は目地が少なく美しい。
松風園の案内図(パンフレットより引用) [ 案内図を拡大する ]
○ | 外露地、内露地を設けた本格的な露地を見学できる。また福岡市中心部ながら静寂な空間で落ち着けるのもよい。 |
× | 特に見当たらない。 |