2018年3月に川越市に「リージョナル ランドマーク ストア」としてオープンしたオープンしたスタバ。川口市安行の庭師、元木氏によって店内に枯山水が作庭された。なお、リージョナル ランドマーク ストアとは、各地域の象徴となる場所に建築デザインされた店舗のことで全国に20店舗以上ある。
趣向を凝らしたコンセプト・スターバックスコーヒーは全国に数店舗あるが、こちらは日本庭園をもつ全国的にも貴重なスタバである。2019年時点では、 宇治平等院表参道店(2017/3)、京都二寧坂ヤサカ茶屋店(2017/6)のみであり、京都以外では初となる。テラスからでも室内からでも日本庭園を楽しめるようにガラス張りになっている。
日本庭園は枯山水。砂紋で大海を表現し、大海と陸の間には栗石が敷き詰められた洲浜(すはま)がみられる。洲浜とは、池泉の水(ここでは砂)を美しく魅せる技法であり、日本庭園でよくみられる技法である。
大海には中島が造られ、形の良い黒松が植栽されている。中島には2つの大きめの石を据えることで、中島と黒松のバランスがとられている。
テラスの死角となるような空間には、可愛らしいピンク色の花びらを咲かした馬酔木(アセビ) がみられる、テラスと枯山水の間には瓦を縦に埋め込み、手前には黒系の丸石を敷き詰め景観を引き締めている。
全体的に曲線を多用し、和の中にモダンを感じる意匠は、モダンな庭園造りで知られる日本庭園史の研究家・重森三玲(しげもりみれい)の作風に近いものがある。
この写真を撮影するために、前日の深夜に川越入りしてパーキングで仮眠をとって、朝イチの8時に撮影。とても気持ちいいモーニングを過ごすことができた。
テラスからの光景。枯山水の奥には観賞用の蹲居(つくばい)も設けられている。蹲居については、清水園(新潟県)の記事を参考にして欲しい。
曲線と直線の対比がとても面白い。
テラスの全景
室内はこのように十分に庭園を眺められる。また庭園には照明設備があり、夜にはライトアップされた庭園を楽しめる。
室内には中庭も設けられ、ほどよい風を感じながら坪庭を楽しめる。屋根があるため、雨天でも利用できるのが嬉しい。
室内空間の全景。川越市の「まちづくりガイドライン」に基づいて、自然採光が受けられるような構造になっている。
これまで古庭園を中心に巡ってきたが、このようなカフェの日本庭園も時折紹介していくことで、日本庭園の美しさをもっと身近に感じとってもらえるよう情報発信をしていきたい。
○ | コンセプトスタバで本格的な枯山水を楽しめる。雰囲気も抜群で、夜もライトアップされた庭園を楽しめるのが嬉しい。 |
× | 子供いたずらだろうか、白砂に黒石が混ざっている。朝イチでの訪問での状態であるため、枯山水は毎朝整備されているものでなく、完璧なスタバとしては少々残念。 |