田茂井邸庭園のある「たゆう」は田茂井家が昭和6年に創業した丹後ちりめん織元であり、様々な賞を受賞している企業である。同地区にある正徳院にて、昭和を代表する作庭家・重森三玲が山門付近を作庭したことをきっかけに、田茂井家にも作庭を依頼し、昭和45年(1970)に完成したのが田茂井邸庭園「蓬仙寿の庭」である。事前予約にて見学できる。
京都最北部の庭園は天橋立から車で40分ほどの距離にある京丹後市にある。当日は田茂井社長に案内頂いた。まず驚いたのが庭園だけではなく、自宅の設計も重森三玲によるもので、玄関は奥に行くほど天井を高くすることで奥行きを出している。まるで龍安寺 石庭のような仕掛けである。ただ邸宅と庭園の距離が近く、室内から全景が眺めにくいのは意図あってのことだろうか。なお自宅は公開しておらず今回特別に見学させ頂いた。
「蓬仙寿の庭」には4つの島を作っている。京丹後の隣町・伊根には浦島太郎伝説があり、丹後松島を模して作られた枯山水である。特に写真の青石による三尊石は意欲的に立てられ力強く美しい。
苔島の汀には出雲砂を固めて隆起した意匠を加えている。これまで重森三玲による庭園を35ヶ所訪問してきたが、このような意匠は初めてだ。また写真中央の2岩は亀島のようにみえるは偶然だろうか。
先ほどの意匠と色違いもあった。こちらは白川砂を固めて打ち寄せる波のように隆起させている。
丹後松島を模しているため、4つの島にはそれぞれ松を植樹している。こちらの島は石組と刈込みが一体化したような意匠だ。
重森三玲では時折見かける州浜模様の延段である。洲浜模様の延段では、三重県菰野町の菰野横山邸園(ちそう菰野)が秀逸だ。
延段は市電で利用していた石を再利用したものとのこと。庭園では廃材のリユースは意外とよく見かける。
先ほどの写真の延段の先にある島を書面から眺める。
庭園南部にある島。
朝イチで訪問時は逆光で撮影が難しかったが、近隣の正徳院を訪問後、曇り空となり撮影しやすくなり、再度撮影をお願いさせていただいた。お忙しいなか快く対応下さりありがとうございました。
○ | 重森三玲の作風をダイレクトに感じ取れる。特に島の汀を固めた砂で隆起させた意匠により、海に浮かぶ島を強くイメージさせており見事である。 |
× | 特に見当たらない。 |