水戸徳川家初代藩主・徳川頼房(よりふさ)の屋敷として江戸時代初期(1629)に建築された大名庭園。2代藩主の徳川光圀に修治により現在の姿となり、現存する江戸時代の最古の大名庭園となる。昭和27年(1952)には文化財保護法によって特別史跡および特別名勝に指定されている。この重複指定を受けているのは、浜離宮恩賜庭園や金閣寺など、全国でも僅かである。
正門を進んでいくと、琵琶湖を見立てて造られた大泉水(だいせんすい)に浮かぶ蓬莱島・亀島がお出迎え。背景に東京ドームが顔を覗かせるが白色であるため気にならない。小石川庭園では全国の名所を摸した造形が多く見られる大名庭園である。それでは園内を巡ってみよう。
まずは小廬山(しょうろざん)。廬山とは上海から560km離れた内陸にある中国の名山。日本庭園では大阪の大仙公園などで廬山を摸した築山がみられる。また、京都東山の清水寺一帯を小廬山と呼ばれており、小石川庭園では京都東山に見立てた築山となる。
小廬山を過ぎると見どころ満載の渡月橋ポイントに到着。まずは屏風岩の裏手にある丘から撮影。渡月橋とは京都・嵐山の桂川に架かる名勝橋。桂川の源流は大堰川(おおいがわ)である。
日本庭園でいくつかの屏風岩を観賞してきたが、群を抜いて美しい名石によるものである。
通天橋に向かう途中にある築山斜面に組まれた力強い石組。気づきにくいポイントであるが、見応えある石組で見逃さないようにしたい。朱色の通天橋は、京都の東福寺にある通天橋を模したものである。
大名庭園には子孫繁栄を願って陰陽石が置かれることが多い。かなり陽石は写実的な石組であるが、陰陽石に気づく人はほとんどいない。ガイドマップなどには場所は記されていないが、枝垂桜のやや南側に置かれている。
平成24年(2012)より修復工事を行っていた白糸の滝周辺が令和2年8月(2020)に完了。笹で覆われた築山に洲浜風に丸石を敷き、飛石と沢飛石で苑路を設けた風流なものだ。
改修された白糸の滝。水流で分かりにくいが、水落部分は横長の切石による石積みにした珍しい手法である。
水面に映る形が満月のように見えることより付けられた円月橋(えんげつぎょう)は、江戸初期に造られた特別史跡の石造アーチ橋であり日本最古とされる。
小石川後楽園で最大の魅力は、最初の写真でも取り上げた蓬莱島・亀島である。蓬莱島とは不老不死の妙薬があるとされる伝説上の山であり、長寿を願う鶴亀庭園では必ずといってみられるものだ。焦点距離125mm(35mm換算)の望遠レンズで撮影しているため、肉眼では石組の構造は分かりにくい。左は石組出造られた亀島で、亀が写真左の蓬莱島を背負っている様子を摸している。左側には垂直に立てた石があり、さながら亀頭石ともいえる。正面から眺めると・・・
高さ4mの板状の石であり、庭師・徳大寺佐兵衛にちなんで徳大寺石と命名されている。池泉の主景ともいえる。
小石川後楽園のもうひとつの魅力はこの内庭。水戸藩書院のあったところで、令和2年(2020)には唐門が復元されている。ちなみに小石川後楽園は内庭のある東門が正門(東門)である。正門から内庭を見学して、後楽園の正式な入口となる唐門から後楽園に向かうのが本来の散策ルートで公式サイトでも正門(東門)からの入園をお薦めしている。このように見学すると徐々に広がる後楽園の景色に感動を覚えるだろう。
小石川後楽園の案内図 [ 案内図を拡大する ]
○ | 古庭園の要素、日本や中国の景勝地を模した要素など見どころ満載の大名庭園。細部に目を向けて見学をしていくと庭園の知識がグッと深まる。 |
× | 特に見当たらない。 |