神勝寺は昭和40年(1965)創建の臨済宗建仁寺派の特例地寺院。広大な敷地を活かして平成28年(2016)にゆっくり禅を楽しむ体験場所として「禅と庭のミュージアム」をオープン。庭園は「賞心庭」、「無明院」、「洸庭」と大きく3つに分かれる。賞心庭は、中根金作の庭園哲学を受け継ぐ中根庭園研究所の中根史郎によって作庭された。
東京ドーム約5つ分となる約7万坪という広大な敷地をもつ新勝寺。2016年にオープンした「禅と庭のミュージアム」では、境内のほぼ全ての敷地を回遊できるようになっており、本記事では受付に一番近いエリアである池泉回遊式「賞心庭」を紹介。写真は永源寺から移築された築350年越えの茶房からの眺め。芝には九山石を配置。写真には写っていないが右にもう1石あり、3・3・3石で組まれている。九山とは富士山、奈良の大和三山である香久山・畝傍山・耳成山、そして中国の五岳を象徴的に表現している。
心字池には舟石。こちらは不老不死の妙薬を求め蓬莱山へ向かう出舟を表しており「出舟石」と呼ばれるものである。蓬莱山から戻ってくる舟石は入舟石と呼ばれる。
龍華の滝。滝が岩肌を伝って落ちている石を「水落ち石」、両脇の巨石は「滝副え石(たきぞえいし)」と呼ぶ。この滝石組には鯉が滝を登っているようにみたてた鯉魚石(りぎょせき)があると記載があるが判別できなかった。鯉魚石については京都の世界遺産「天龍寺 曹源池庭園」の記事を参考にして欲しい。
先ほどの出舟石が向かう先にある蓬莱島。長寿のシンボルでもある松が植樹されている。
水際を美しく見せる州浜越しに方丈島を望む。方丈島とは、不老不振の仙人が住むとされる神仙島のひとつであり、蓬莱山、方丈、壷梁(こりょう)、瀛州(えいしゅう)がある。これら4島の石組みは京都の重森三玲庭園美術館でみられる。
先ほどの神仙島のひとつである瀛州(えいしゅう)。右の岩島は須弥山石(しゅみせんいし)である。須弥山は、中国三大宗教のひとつ「仏教」の思想であり”世界の中心となる石”を表す。須弥山石については、雪舟によって作庭された島根県益田市の萬福寺を訪れて理解を深めたい。
方丈島を別角度から撮影。
心字池には2つの出島が設けられ、青石による護岸石組で囲まれている。
賞心庭から5分ほど北上して、竹径を抜けると茶室「一来亭(いちらいてい)」へ繋がる苔庭が現れる。
茶室建築の第一人者でもある中村昌夫(まさお)氏によって設計された茶室「一来亭(いちらいてい)」の額縁庭園。茶室には入室できないが、対角線上にある窓から撮影できる。
国際禅道場の本堂前から鐘楼を眺める。
再び賞心庭に戻り、州浜と茶房「含空院(がんくいん)」を望む。含空院では甘味も楽しめる。広大な神勝寺の8割のエリアを紹介してきたが、見所は全体の三分の一である。
神勝寺 禅と庭のミュージアム 案内図。赤枠が本記事での紹介エリア。 [ 案内図を拡大する ]
○ | 広大な敷地に恵まれた借景。賞心庭には日本庭園の要素がぎっしり詰まっており、近年の日本庭園ながらも学びが多い。 |
× | 特に見当たらない。 |