東京都最古の寺である浅草寺の本坊が伝法院である。本坊庭園は江戸幕府の茶人としても知られる庭園デザイナー・小堀遠州による作庭といわれる、伝法院は非公開であるが、平成23年(2011)に国指定名勝の指定後、3月中旬から5月上旬に「伝法院庭園特別拝観」が開催されている。
毎年3月中旬から5月上旬に特別公開される伝法院庭園は、五重塔と東京スカイツリーを背景とした周遊式池泉庭園である。庭園を語る上で外せない作庭家・小堀遠州の作庭と伝えられ、都内では池上本門寺「松涛園」と、皇居東御苑 二の丸庭園の3ヶ所だけである。
園内を彩る主な植栽は、しだれ桜、ヤマザクラ、藤(4月中旬~)であり特別拝観期間の訪問がベストシーズンになっている。写真はしだれ桜であり、青空と苔庭と桜の色彩が美しい。
空を見上げれば、このような華やかな光景となり、
見下ろせば苔庭の落ち着いた光景が広がる。苔庭には飛石が造られているが、立ち入り禁止で歩くことはできない。
伝法院庭園は石橋を中心に東西に池泉が広がり、その全貌を楽しめるのは写真の西部側である。池泉西部には2ヶ所の出島が設けられ、力強い護岸石組で構成されている。護岸石組:岸に並べられた石組
護岸石組の内側にある築山の麓にも石組を設けている。護岸石組と麓の石組の間には石を敷き詰め苑路とし、機能性のあるデザインとなっている。
高台から先ほどの苑路を眺めてみると、手前側の池泉にはなだらかに石を敷き詰めて洲浜(すはま)を表現している。洲浜:池泉の水を美しく魅せる技法。
そして、伝法院庭園最大の見所は枯滝石組である。対岸からは遠く、苑路からは分かりにくい場所にあり、園内マップにも記されず、この枯滝石組に目を留める人は皆無。枯滝石組の高台から園内を撮影する人ばかりである。滝下には栗石を敷き詰めることで美しい洲浜を表現し、また写真は無いが対岸から眺めると滝上が三尊石風になっている。ちなみに、数少ない都内における枯滝石組で私が最も美しいと思うのは清澄庭園だ。伝法院から電車を使って約30分程なので、併せて訪れてみたい。
最後に茶室「天祐庵(てんゆうあん)」。天祐庵は、江戸時代に名古屋の茶人牧野作兵衛(まきのさくべい)によって、安土桃山時代に千利休によって造られた表千家不審庵(おもてせんけふしんあん)を模して造られた茶室を、この地に移築したものである。写真手間の待合室のような空間は、客人が主人の迎えを待つ腰掛け待合であり、ここから飛石で茶室へと導かれる。
伝法院庭園の案内図。枯滝石組の場所を追記しています。 [ 案内図を拡大する ]
○ | 都内では余りみれない江戸時代の枯滝石組を見られる。また浅草五重塔と東京スカイツリーと時空を越えた2つの建築物を背景となるのも面白い。 |
× | 古庭園を楽しもうとすると枯滝石組以外の見所が少ない。 |