雨に日こそ訪れたい京都で苔の美しい庭園14選
京都の庭園は、紅葉や桜の開花時期は大人気で多くの観光客が集まり混雑する。落ち着いて庭園を鑑賞したい私がお薦めしたいのは雨天時である。このような日は苔の美しい庭園に脚を伸ばしてみたい。混雑が回避できるだけだけではなく、雨で苔が活き活きしている。さらに雨により石が艶やかになり、さらには日差しによる明暗がなくなり、撮影するにも実は好条件なのである。
近年の温暖化により、苔にとっては徐々に厳しい環境になってきている。近い将来美しい苔を見学することは難しくなってくるかもしれない。このような苔をいまのうちに堪能しておきませんか。
今回は京都の庭園を150ヶ所以上取材したなかから、苔が美しい庭園を14ヶ所選定してみました。
苔の美しい庭園14選
- 京都市北部
- 京都市南部
- 嵐山エリア
- 西芳寺エリア
京都市北部
三千院 <大原エリア>
大原三千院といえば、写真の「わらべ地蔵」が有名。このお地蔵様は静岡県の石彫刻家・杉村孝によるもの。境内には3つの庭園があり、客殿前の庭園「聚碧園(しゅうへきえん)」とよばれ、江戸時代の茶人・金森宗和の改修と伝えられる。境内全体が木々で囲まれ、直射日光が遮られていることもあり、苔の質も良質である。
アクセス:京都駅から約1時間30分(地下鉄 国際会館駅から京都バス19系で22分、大原バス停から徒歩10分)
圓光寺(円光寺) <一乗寺エリア>
徳川家康によって開基された由緒ある寺院・圓光寺。江戸時代に「十牛之庭(じゅうぎゅうのにわ)」は額縁庭園の撮影スポットとしても人気である。十牛とは、禅の悟りに至る道を表現したものである。また圓光寺には天空を舞う龍を石組で表現した枯山水「奔龍庭(ほんりゅうてい)」も見応えある。
アクセス:比叡電鉄本線「一乗寺」駅 徒歩15分、市バス5系統「一乗寺下り松町」 徒歩10分
白龍園
大正時代に創業した衣料製造販売する青野株式会社が、昭和38年から20年の歳月を掛け白龍園完成。平成24年(2012)から期間限定で公開され、現在は春と秋に予約制で見学できる。平らな面を路面になるように敷き詰められた敷石「霰こぼし(あられこぼし)」も美しく見逃せない。
アクセス:叡山電鉄鞍馬線「二ノ瀬」駅 徒歩7分、市営地下鉄「国際会館」駅よりバスで二ノ瀬下車 徒歩4分(1時間2便程度)
瑠璃光院
「床もみじ」の撮影スポットとして日本一有名な寺院。「床もみじ」は写真映えするため多くの観光客が殺到するが、私は「床もみじ」よりも苔が美しい「瑠璃の庭」に感銘を受けた。桂離宮や修学院離宮の整備経験をもつ造園家・佐野藤右衛門(植藤造園)によって作庭され、水が豊かなこともあり苔の状態が極めて良い。
アクセス:叡山電鉄「八瀬比叡山口」駅 徒歩5分
慈照寺(銀閣寺)
京都を代表する寺院のひとつ銀閣寺。山肌に広がる苔の美しさに魅了される。この苔には苔寺として名高い西芳寺と関連がある。銀閣寺は8代将軍・足利義政によって開基されたが、義政が西芳寺にならって作庭している。なお誤解のないよう加えると、当時の西芳寺は現在のような苔が広がる庭園ではなく、寺院の荒廃し自然にかえるなかで苔が育ち現在の姿になっている。
アクセス:京阪「出町柳」駅から市営バスで約7分。バス停「銀閣寺道」で下車し徒歩8分。
旧三井家下鴨別邸
木屋町三条から移築された三井財閥の別邸は三階建て。江戸時代の茶室、明治時代の主屋が残り、昭和26年から平成19年までは京都家庭裁判所の所長宿舎として利用されていた。別邸と池泉の間に苔庭を設け、日当たりのよい空間にもかかわらず良質な苔である。特別公開時期には二階と三階にも上がれる。
アクセス:京阪電車・叡山電鉄「出町柳」駅下車、徒歩約5分
廬山寺
京都御所の東側にある廬山寺は紫式部が育った邸宅である。源氏庭と呼ばれる枯山水は昭和40年に整備されたもので、白砂と苔の曲線が美しい。特に6月末から9月初旬にかけては紫式部にちなんで、紫の桔梗が咲くため訪問はこの時期がお薦めである。なお都市部ながら無料駐車場を完備している。
アクセス:市バス 府立医大病院前下車 徒歩4分、京阪 出町柳駅 徒歩15分 、地下鉄烏丸線 丸太町駅 徒歩20分
京都市南部
東福寺 本坊庭園(八相の庭)
苔庭を紹介するなかで外せないのが、東福寺の「八相の庭」である。庭園好きであれば、誰もが知る重森三玲が初期に作庭したモザニズムな苔庭である。縁側から遠くにいくに従って、まばらになっていき、かつ苔が盛り上がっていることで奥行きと立体感を生み出している。本庭園は4種類の庭園で構成されており、東福寺エリアでは外せない庭園スポットといっても良いだろう。
アクセス:JR・京阪「東福寺」駅 徒歩10分
>東福寺 本坊庭園(八相の庭)の写真、拝観料、拝観時間などを確認する
真如院
毎年10月に年間6日ほどしか公開されない真如院。かつては撮影禁止であったが、2022年の特別公開時期には庭園は撮影できるようになっていた。今回紹介する庭園で最もコンパクトなものであるが、その造形美は見事である。都市部にあるが建築物に囲まれていることより、日陰となり苔は良質で、また鱗型の石を丁寧に並べることで、水流を表現している意匠には感銘を受けた。
アクセス:JR「丹波口」駅もしくは市営地下鉄「五条」駅 徒歩12分、京都駅から市バスで堀川五条下車 徒歩3分
嵐山エリア
宝厳院 獅子吼の庭
春・秋の特別公開時期のみ公開される宝厳院。嵐山の借景を取り入れた池泉回遊式庭園は、良質な苔で囲まれており、深い森林に入ったような感覚になる。ちなみに獅子吼(ししく)とは「仏が説法する」の意味であり、庭園を廻遊することで人生の真理を肌で感じる庭という意味を表している。
アクセス:JR「嵯峨嵐山」駅 徒歩10分、嵐電「嵐山」駅 徒歩3分、阪急「嵐山駅」 徒歩10分
野宮神社 じゅうたん苔
本記事で紹介しているなかで唯一無料開放されている苔庭。平安時代に建立されたとされる由緒ある野宮神社は縁結びの神様ともして知られる。嵐山の名所である「竹林の小径」に続く場所にあるため、合わせて訪問してみると良いだろう。
アクセス:京福電鉄嵐山線「嵐山」駅 徒歩6分、JR嵯峨野線「嵯峨嵐山」駅 徒歩7分、トロッコ「嵐山」駅 徒歩5分
>野宮神社 じゅうたん苔の写真、拝観料、拝観時間などを確認する
祇王寺
西芳寺と並んで苔庭で知られるのが嵐山にある祇王寺は、平家物語に登場する「悲恋の尼寺」としても知られる。竹林と樹木に囲まれた苔庭は、朝6時から2時間かけてゆっくりと水をまくことで苔を痛めることなく潤いを与えている。写真では広い敷地を想像するが、コンパクトな敷地で15分もあれば十分県月と撮影を楽しめる。
アクセス:JR嵯峨野線「嵯峨嵐山」駅 徒歩20分/京福電鉄「嵐山」駅 徒歩20分
西芳寺エリア
西芳寺(苔寺)
日本庭園のなかで苔で有名な寺院といえば西芳寺である。世界遺産にも登録されている西芳寺は、奈良時代の僧侶・行基(ぎぃうき)によって開山し、室町初期(1339)に日本初の作庭家ともいわれる夢窓疎石(むそうそせき)によって中興。作庭当時は苔庭ではなく、寺院が荒廃し自然にかえるなかで苔が育ち現在の姿になっている。完全事前予約制で写経で心を清めたのちに初めて庭園を見学できる仕組みである。
アクセス:京都駅から京都バス(73系統)約60分「苔寺・すず虫寺」下車 徒歩3分
地蔵院(竹の寺)
最後に紹介するのは西芳寺(苔寺)から徒歩6分ほどの距離にある地蔵院。室町時代に夢窓疎石(むそうそうせき)によって開山された由緒ある寺院だが、場所柄だろうか観光客はまばらである。書院からは江戸時代に作庭された「十六羅漢の庭」が広がり、額縁庭園も美しい。反対側にハート形の猪目窓越しの竹林も撮影しておきたいポイントだ。
アクセス:阪急「上桂」駅 徒歩約12分、京都バス73番「苔寺」下車 徒歩約3分