昭和2年に開院した小林医院(現在の駒木野病院)の院長自宅が寄付され、日本庭園を整備して平成24年(2012)に高尾駒木野庭園として開園。
八王子で常時一般公開されている唯一の日本庭園。平成24年に整備された新しい日本庭園であるが、池泉庭園、枯山水、露地と日本庭園の三様式をもつ。特筆したいのが折りたたみ式のガイドマップ。とても分かりやすく日本庭園の理解にとても役立つ。
まず池泉回遊式庭園から。心字池に亀島と鶴島が対になった代表的な構成。日本庭園には草書「心」の字をかたどった「心字池(しんじいけ)」がよく見られる。ただ一般的に草書の「心」で、かなり崩した字体であり「心」という字に見えないものが多い。
池泉は石橋で東部と西部に分かれ、東部には小型の滝石組が造られている。望遠レンズで撮影してみると・・・
このようになっている。水が落ちる面の石を水落石(みずおちいし)、水落石の両脇には滝添石を組み、滝頂部には三尊石風の石組がみられる。そして滝壺の位置に石を据えている。(写真での★マーク)。ガイドマップには龍門瀑(りゅうもんばく)とも記載していることから、この石は鯉魚石(りぎょせき)となる。これは鯉が滝登りしている様子であり、詳しく鹿苑寺庭園(金閣寺)などを参考にして欲しい。
池泉庭園の周辺には「草の石畳」と表記された苑路が設けられている。これは、自然石のみの延段(草の延段)を意味している。ちなみに玄関付近には「真の石畳」と表記されており、これは切石のみの延段(真の延段)を意味している。また自然石と切石がミックスしていると「行の延段」となる。
家屋の南庭には本格的な盆栽が飾られている。それぞれの盆栽の種類が分かり、黒松、赤松、五葉松、蝦夷松の違いを理解するのに役立つ。
和室「中の間」から額縁庭園を撮影。
枯山水は室町時代に禅宗寺院の庭を中心に発展した形式である。枯山水は関西では多数みられるが、東京では少なく、一般公開されているもので本格的なものは、他には青梅市の玉堂美術館ぐらいだろう。
枯山水南部には三尊石組が組まれている。中央の立石が中尊石で、両側の添え石を脇侍石(わきじいし)と呼び、極楽浄土に往生する浄土思想を表現している。
枯山水北部には枯滝石組が隠れている。写真では★マークになっているが、望遠レンズでないと、その姿は分からない。
望遠レンズで撮影してみた。植栽が伸びきり、石組が隠れているのが残念であるが、2つの滝添石に挟まれたところに水落石を組んでいるのが分かるだろうか。そして、水の流れを玉石で表現し、やがて白砂で表現した大海へと流れ込んでいる。
続いて露地。露地とは茶室に付随する茶庭である。切石と自然石で延段が造られているので、これは「行の延段」となる。
露地には水琴窟と石灯籠が造られている。高尾山麓にある庭園で都内から離れているが、知識が深まり訪れる価値ある庭園だと思う。
高尾駒木野庭園の案内図に、三尊石と枯滝石組の場所を追記。 [ 案内図を拡大する ]
○ | 日本庭園の三要素(池泉、枯山水、露地)を全て兼ね備えつつ、折りたたみ式のガイドマップには、とても分かりやすく解説している。日本庭園に基本を知りたい方には、強く訪問を勧めたい。 |
× | よく手入れされているが、植栽が伸びきっていて石組が隠れているところがある。 |