大名庭園 おすすめ12選
大名庭園とは江戸時代に各藩の大名が築造した庭園である。その数は1000ともいわれている。
なぜ大名が庭園をこぞって庭園を造ったかというと、武家諸法度によるものだ。大名は徳川幕府から各領国の支配権を認められた代わりに、武家諸法度への服従が求められた。その代表例が参勤交代である。大名は幕府への謀反の意志がないことを示すため軍事費を削減して、こぞって庭園造りを進めてきた。
参勤交代で見た富士山、琵琶湖、白糸の滝などの光景を庭園に映し出す縮景も、この時代に発展した技法である。このような大名庭園のなかでお薦めしたい12ヶ所を紹介していきます。
如斯亭(秋田市)
久保田藩(秋田藩とも)の佐竹氏別邸が如斯亭。昭和後半は旅館であり平成29年(2017)より一般公開された。東北では数少ない大名庭園のひとつで、高低差のある地割りを活かすことで、茶室「清音亭」では水のせせらぎを楽しめる空間になっている。
小石川後楽園(都内)
水戸徳川家の上屋敷に作庭され、江戸時代の現存する最古の大名庭園だ。朱色の通天橋は、京都の東福寺にある通天橋を模したものである。琵琶湖の竹生島、渡月橋、白糸の滝など各地の名所を映し出しているが、本庭園は中国の風景も模しているのが特徴。特に杭州市の西湖を模した石造りの堤などは見逃せない。
六義園(都内)
五代将軍・徳川綱吉からの信頼を得ていた川越藩主・柳澤吉保の下屋敷。紀州の名勝を「六義園八十八境」として映し出しているのが特徴。また池泉にはアーチ状の石組を蓬莱島として見立てている。望遠レンズで詳細を確認したくなるような奇岩だ。
清水園(新潟県新発田市)
新発田藩三代藩の下屋敷。近江八景をとり入れた庭園であり、洲浜から荒磯(ありそ)へと続き、その先に置かれている岬灯籠が置かれた意匠が注目したいポイントだ。また書院からの額縁庭園も重厚感があり忘れずに撮影しておきたい。
養活館庭園(福井市)
福井藩主 越前松平家の別邸。北陸では現存する大名庭園は兼六園と養活館のみ。涼を感じとれる座敷からの眺めは他の大名庭園では味わえない大きな特徴。また遣水から洲浜を経由して池泉へと流れる景も見逃せない美しいポイントである。
玄宮園(滋賀県彦根市)
彦根藩4代藩主の井伊直興によって整備された大名庭園。現存する大名庭園のなかでも石組の力強さはトップクラス。石組の見どころが多く、本サイトで事前知識を仕入れてゆっくり廻遊したい。特に鶴島と亀島の両方共見応えあるのは希有だ。
養翠園(和歌山市)
紀州徳川家により8年の歳月を掛けて作庭された大名庭園。中国の庭園を模しており、蘇州の西湖(さいこ)に造られた長さ2.8kmの堤防をイメージした三ツ橋は見どころ。また石橋はもとより護岸石組まで紀州の特産でもある青石で構成されている贅沢仕様。
縮景園(広島市)
広島藩の大名庭園で千利休と師弟関係をもつ上田宗箇(うえだ そうこ)によって作庭。養翠園同様に中国の景勝地である杭州市の「西湖の堤」を模倣しているといわれる。縮景園の濯纓池(たくえいち)には12の中島があり、それらが鶴島・亀島となっている。
栗林公園(香川県高松市)
高松城主・生駒氏の家臣、佐藤志摩介(さとうしまのすけ)が、隠居時に仏教信仰の為の作庭したのが始まりと言われる。明治時代の教科書で三名園よりも美しいと評されていた。栗林公園の大きな魅力は和船。池泉舟遊式庭園は数あれど、現代の時代に舟遊できるのは栗林公園ぐらいだろう。
立花氏庭園 松濤園(福岡県柳川市)
柳川藩主・立花家の別邸。「松島の景」を模した池泉庭園であり、一見単調な池泉庭園にみえるが望遠レンズ(焦点距離110mmで撮影)で眺めるといくつもの岩島が配置されている。庭園内は廻遊できないためオペラグラスや望遠レンズを持参して訪問しないと本来の美しさを感じとれないだろう。
水前寺 成趣園(熊本市)
九州で最も有名な庭園といえば本庭園だろう。初代熊本藩主・細川忠利の屋敷。東海道五十三次の名所を凝縮した縮景庭園であり、琵琶湖に浮かぶ竹生島、富士山、日本橋などがみられる。
仙巌園(鹿児島市)
薩摩藩主・島津家の別邸で19代光久によって造園。仙巌園を訪問する多くの人が気づいていないと思うが、江戸時代の「曲水の庭」が唯一残る庭園である。桜島を借景としているため、逆光とならない午後の観光がお薦めである。